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「NEWTOWN」のコンセプトを踏まえ美術展「Precious Situation」では、多様な価値観と出会うきっかけをつくる場を目指し、作品が生み出す“交歓”をメインテーマとする。
過去2回の美術展の出発点でもあるE・ハワードの元で住宅や地域計画に取り組んだ建築家レイモンド・アンウィンは、ウィリアム・モリスやジョン・ラスキンらから深い影響を受け、郊外で理想的なコミュニティを実現することを目指した。これまで日本の郊外では活発化することはなかったが、レイモンド・アンウィンの思想は東京の下町で展開されたセツルメント運動の理念が通底している。
セツルメント運動は地域コミュニィティや社会福祉とアートがオーバーラップした活動と振り返ることができる。それは美術制度に頼らない場所で、創造力を通じて地域の人々が交歓する場でもあったのではないか。上記テーマを実現するために、社会福祉とアートをテーマに既に活動している、または多様な来場者との交歓を志向できるアーティストやプロジェクトを招聘した美術展を企画する。
■キュレーション:青木彬
1989年生まれ。東京都出身。首都大学東京インダストリアルアートコース卒業。プロジェクトスクール@3331第一期修了。公共劇場勤務を経て現職。アートプロジェクトやオルタナティヴ・スペースをつくる実践を通し、日常生活でアートの思考や作品がいかに創造的な場を生み出せるかを模索している。これまでの主なキュレーションに、「中島晴矢個展 麻布逍遥」(2017, SNOW Contemporary)、「根をもつことと翼をもつこと」(2017, 大田区京浜島、天王洲アイル)などがある。「ソーシャリー・エンゲイジド・アート展」(2017, アーツ千代田3331)キュラトリアルアシスタント、「黄金町バザール2017 –Double Façade 他者と出会うための複数の方法」(2017, 横浜市)アシスタントキュレーター。「KAC Curatorial Research Program vol.01『逡巡のための風景』」(2019, 京都芸術センター)ゲストキュレーター。社会的擁護下にある子供たちとアーティストを繋ぐ「dear Me」プロジェクト企画・制作。まちを学びの場に見立てる「ファンタジア!ファンタジア!─生き方がかたちになったまち─」ディレクター。
■関連トーク
①交歓する場はいかいに創造されるか
E・ハワードとニュータウンの住宅や地域計画に取り組んだレイモンド・アンウィンらがセツルメント運動とも切り離せない関係にあったように、新興住宅地域におけるコミュニティ形成を考えるためには、まちづくりから社会福祉、芸術活動を共に語る必要があるのかもしれない。「社会と芸術」が語られる一方でその実践がますます困難になりつつある現在、両者を繋ぐ新たな言葉を紡ぐ手がかりを見つける。
登壇者:
青木彬(本展キュレーター)
参加アーティスト
ゲスト:黒石いずみ(青山学院大学総合文化政策学部教授)
ゲストプロフィール:
黒石いずみ
青山学院大学総合文化政策学部教授、秋田県生まれ。一級建築士として建築デザインの仕事を行う。出産後家族で渡米し、ペンシルバニア大学で博士号を取得。以来今和次郎の研究を継続して各国で展覧会とWSを開催。そのほかに都市・建築のデザインや技術の社会史、生活文化資源によるまちづくり、小規模住宅の居間や台所に見るライフスタイルの比較研究を行う。フィールドとして、山形県の高校生との農村環境と食と祭りの研究や、東北大震災被災地の高齢者住宅や景観とコミュニティの調査、渋谷の生活調査、京都の陶芸職人の工房調査などを行なっている。
②郊外を語ることで見えてきたもの
これまでの「NEWTONW」美術展のキュレーターチームをゲストに迎え、郊外を語ることでどのような風景が見えてきたのかを議論する。
登壇者:
青木彬(本展キュレーター)
石井友人(アーティスト)
中島晴矢(アーティスト)
原田裕規(アーティスト)
■参加作家プロフィール
ABEBE
埼玉県所沢市出身。バブル崩壊と共に生を受ける。2013年geisai#18の入賞から活動を始め、クラブイベント、野外フェスなど地域を問わず各地でペイントを行う。以降、アパレルブランド”WHO’SWHOgallery”とのコラボレーション、ヒップホップグループ”PrefabSoundPro.”へのアートワーク提供、 “GuitarArtJam×山野楽器”での楽器制作など、ジャンルの垣根を越えて活動を続けている。
今井さつき
【『はじまりのだいち』(2017)】
1988年 神奈川県出身。東京藝術大学大学院修士課程修了。現在同大学博士後期課程に在籍中。鑑賞者の体験によって変化していく作品や空間インスタレーションを制作している。自身や鑑賞者が作品への体験や参加を通して、世界を緩やかに変えていく実感や、他者との繋がりを生み出すことを試みている。主な個展に「いらっしゃいませ展」(gallery bonun/ソウル/2015)。主なグループ展に「無意味、のようなもの」(はじまりの美術館/福島県/2018)、「TURNフェス」(東京都美術館/東京都/2015-2019)等。
オル太
【 『スタンドプレーvol.2』(2018)】
井上徹、川村和秀、斉藤隆文、長谷川義朗、メグ忍者、Jang-Chi の 6 名からなるアーティスト・コレクティブ。2009年結成。人間の根源的な欲求や感覚について、 自らの身体を投じたパフォーマンスを通じて問いかけている。近年参加した主な展覧会に「青森EARTH2019:いのち耕す場所 -農業がひらくアートの未来」(青森県立美術館、青森、2019)、「Hybridizing Earth Discussing Multitude」(釜山ビエンナーレ、韓国、2016)などがある。第14回岡本太郎賞受賞。
dear Me
【『どんどこ! 巨大紙相撲 星美場所』(2018年) Photo by Yukiko Koshima】
現代アートの学びや表現の場をつくる NPO 法人アーツイニシアティヴトウキョウ [AIT/ エイト ] が 2016 年より 行うアートのプログラムです。子どもたちや若者、日本や海外の国からのアーティストと一緒にアートをつくる 「ワークショップ」、じぶんの言葉やみんなの考えを知る美術館への「お出かけ鑑賞プログラム」、そして、アート の考えを取り入れた「まなびの場」づくりをしています。
INFORMATION
- 日程
- 2019年10月19日(土)、20日(日)
- 時間
- 11:00〜19:00
- エリア
- 学校エリア
- 参加作家
- dear Me、今井さつき、オル太、ABEBE
- キュレーション
- 青木彬
- インストーラー
- 吉田尚弘
- 協力
- NEWTOWN美術展チーム(石井友人、中島晴矢、原田裕規)
- 料金
- 無料